手話とは、手の動きや位置、形によって意志を伝え、目で見る言語。耳や口が不自由な人との大切なコミュニケーション手段です。手話をつけて楽曲を歌う、という経験があるかたもいらっしゃるでしょう。とくに合唱曲の「Believe」や「ふるさと」などは、よく手話を使って表現されていますよね。ただし様々な【手話ソング】には、否定的な意見も。既存曲の歌詞をただ手話に置き換えるだけでは、ぶつ切りの単語にしかならず、なかなか聴覚障害者に意味が伝わらない。ゆえに“音楽”として楽しむことができない。そのような声が多いのです。

でもだからこそ『聞こえない方にも“音楽”として楽しんでもらえるエンターテインメントを作りたい』という想いで、活動をし続けてきたアーティストがいます。2018年9月19日にメジャーデビューを果す“HANDSIGN”です!ボーカル×ダンス×手話パフォーマンスで、メッセージを届ける男性2人組ユニット。今回の特集ではそんな彼らに注目し、活動について、手話ソングの可能性について、たっぷりお伺いしました。さらに<Twitter>や<LINE>などの現代的手話のレクチャーも!是非、最後までご一読を!

TATSU 2004年、僕がドラマ『オレンジデイズ』を観たのが始まりです。妻夫木聡さん演じる男性は、聴覚障害を持つヒロインの女性(柴咲コウ)と話したいから、苦じゃなく自然と手話を覚えていくんですよね。そうやって好きな人のために何かを乗り越えようとしている姿ってかっこいいなって思いました。同時に、手話っていろんな可能性があるのかもしれないと、徐々に惹かれて。まずは自分が好きなダンスミュージックに手話を取り入れて【手話ダンス】というものを始めたんです。中学の頃からずっと一緒にダンスをやっていたSHINGOと。そして2005年に結成したのが“HANDSIGN”ですね。

~実話をもとに制作された「僕が君の耳になる」MV~
聞こえない女性と聞こえる男性の実話をもとにしたラブソング。声が聞こえないことで様々なすれ違いを重ねてきた二人が壁を乗り越えて結ばれる、という感動的な結末が話題を呼び、通称“僕耳(ぼくみみ)”として大きな反響を呼んでおります。女優・足立梨花が耳の聞こえない女性役を熱演したことでも注目を集めました。現在、YouTubeにて再生回数200万回を突破!

TATSU この「僕が君の耳になる」のMVは2017年3月に公開したものなのですが、Facebookで日本語のものを発信したら、韓国の聴覚障害者の方が、自分で韓国語の字幕をつけて、韓国の方々に広めてくれたんです。そうしたら向こうでも「すごく良い」という反応をたくさん頂いて。もしかしたら、ただ歌うだけよりも【手話ダンス】があることで言葉の壁を越えられる可能性って広まるのかな、と思いました。だから今回のメジャーデビューシングルにはCDのほかにミュージックビデオの字幕が日本語以外に、英語と韓国語が選べるDVDがついています。

ネットで【手話ソング】について検索すると「聴覚障害者が“音楽”として楽しめるものではない」という
批判的な意見も見られました。そうしたなかでお二人はどのように“HANDSIGN”の音楽を確立していったのでしょうか。

SHINGO 否定的な意見が多くあがってしまう手話ソングって大体、英語の歌をそのまま単語ずつ日本語に訳しましたというようなやり方で。そうすると「単語」「単語」「単語」の連続で文脈が繋がらなくて、聞こえない方からするとすごくつまらないんですよね。しっかり“この歌詞はこういうメッセージなんだ”ということを伝えることを意識しながら曲を作っていかないと、やっぱり良い作品はできないのかなって思いますね。

photo_01です。

TATSU また、そこにダンスやジェスチャーを入れたり、表情で表現したり、全身を使ったほうがより伝わる幅が広がるのかなって。そういう見せ方ひとつでも、だいぶ変わってくると思います。活動すればするほど、手話ソングって本当に奥深いなぁって感じますね。

SHINGO 僕らも最初はそれこそ、手話の本を買ってきて、ただ歌詞に合わせて、単語を並べていくようにやっていましたね。それが経験の中で「あ、これじゃダメなんだな」とわかってきて、徐々に今の形が確立したのかな。僕はHANDSIGNを始めてから、初めて聴覚障害を持つ方々に出会ったんですよ。それまでは、勝手な偏見ですけど、耳が不自由だから毎日すごく暗い思いを抱えているのかな?とか思っていました。だけど初めて会った方は、一緒にお酒を呑んでいたら、いきなり「クラブ行こうよ!」って。僕は「え!クラブ行くの!?」ってビックリして。でも「重低音が身体に響いて気持ちいいのよ!テキーラ飲もうよ!」みたいなノリで(笑)。

TATSU そうそう。最近、動画もアップされていたりするんですけど、HANDSIGNの「僕が君の耳になる」をカラオケに行ってみんなで手話でやって盛り上がって音楽を楽しんでくれていたりとか。

SHINGO 実際に聴覚障害者の方々と話してみると「あ、思っていたのと全然違うわ」って気づくことがたくさんあります。それは他の障害がある方も同じだと思いますし、こういう活動をしていなかったら気づけなかったことですね。

TATSU 学校で手話ダンスを伝える活動をしたあと、子どもたちが書いてくれたアンケートをもらうんですね。中学生や高校生って本当に素直で、冒頭には「初めは絶対つまらないと思っていたので、寝る準備万端でした」とか書いてあるんですよ(笑)。だけど「それを覆すかのようにめっちゃ楽しかったです。手話を覚えたいです」「手話のイメージが変わりました」って。そういう感想が8割くらいです。やっぱり聞こえる人たちにとっての手話ってどこか、ニュース番組の小窓でやっているような、ちょっと静かなイメージがあるんですよね。だからこそ、ボーカル×ダンス×手話パフォーマンスという新しい表現方法で伝えることで、自然に「やりたい」という気持ちも生まれるんじゃないかなって。

photo_01です。


そもそもダンスが好きな若い子って多いので、そこに手話が入ってくることで、普通に手話を勉強するより接しやすいのかなと思います。今、動画アプリ「Tik Tok」ってすごく流行っているじゃないですか。そこで「僕が君の耳になる」をやってくれている方もたくさんいるんですよ。ビックリしました。一人が動画をアップすると、結構みんなダンスの振り付けのような感覚でやってくれるので、嬉しいですね。そういう形からでも、より多くの方に手話に興味を持ってほしいと思っています。

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