加藤ミリヤの「SAYONARAベイベー」で、「サヨナラ」「嘘よ傍にいて」「愛してる?」「信じてもいいの?」と相手に語りかけ、問いかける言葉が特徴的である。さらに“LINE歌詞ドッキリ”によく使用されている曲として、歌ネットでも大人気のback number「花束」やKANA-BOON「ないものねだり」、西野カナ「Best Friend」などが挙げられている。若者達が作り出したこの“歌詞”の新たな楽しみ方は、“LINE歌詞ドッキリ”の他にも歌詞画や歌詞プリ、Twitterでの歌詞botなど多種多様であるようだ。
  告うたのカリスマガールこと、“erica”の「あなたへ贈る歌」だ。同曲は、2013年1月にデジタルシングルとしてリリースされた楽曲だが、2014年10月中旬から突如、歌ネットで歌詞検索数が急上昇し、ランキング圏外からトップ10への大飛躍を見せた。現在でもその人気は衰えず、YouTubeの再生回数が500万回にも迫る勢いだ。もともとericaはメディアへの露出がそれほど多いアーティストではないが、急にこれだけの人気を得た理由の一つとして挙げられるのが、前述した“LINE歌詞ドッキリ”をはじめ、SNSをツールとしてじわじわ広がる“口コミ”のチカラであることは間違いない。


「突然ごめんね」「でも聞いてほしい」「目を見たらきっと言えない気がするから」と短文で言葉を少しずつ紡いでいく「あなたへ贈る歌」の歌詞は、想いを一行ずつ文字で感じることが出来るLINEにはぴったり。その反響の多さはerica自身のブログでも取り上げられている。ericaは、このブームをTwitterを見ていたスタッフが発見したことから知ったそうで、「普段恥ずかしくて言えない気持ちを歌詞で告白できるから中々言えないこともこれなら冗談っぽく言えるしいいよね!!最初に考えた人凄い!!」と喜びと驚きの気持ちをつづっている。
→ericaオフシャルサイト

  実はこの曲は、ファンの女の子からもらった一通のお手紙がきっかけになった曲なんです。どうしても告白したいけど直接伝える勇気がない、だからericaの曲で告白したい。そんな内容のお手紙でした。それまでは恋のお悩みをいただく度にブログなどでお返事をしていたんですが、せっかくだったら文章ではなくその子の気持ちを代弁して曲(歌詞)を作ってあげたいなって思って。もちろん作った時はリリースする予定もなくて、ただその子のために作ったこの曲をYouTubeにアップして聴いてもらえたらいいなくらいに思っていたんですが、それがどんどん知らないうちに沢山の方に聴いていただくようになっていって。。。最初は一人の子のために作った曲が、今では「この曲で告白すると恋が叶う!」なんて言ってもらえるまでになりました。この曲がきっかけで、ファンの子のお悩みを元に曲を作る「告うた企画」という企画がスタートしました。昨年出したファーストアルバムの収録曲は、ほとんどこの企画から誕生した曲ばかりで、そういう意味でも私にとって本当に大切なきっかけを与えてくれた曲になりました。口コミが口コミを呼んで、じわじわと人から人に伝わって、時間をかけてこの曲が広がっていることは、素直にとても嬉しいです。この曲は、ずっと伝えたかった気持ちを等身大の言葉で歌った曲なので、その歌詞に共感していただいたからこそ、多くの方に聴いていただけたのかなと思っています。ちなみに…その子はのちにこの曲(「あなたへ贈る歌」)で好きな人に告白をして、成功したというご報告もいただきましたよ!
  SNSを使うようになったきっかけは、もっとファンのみんなと交流したい!!と思ったことから。それまでは日記のような形で日々のことをブログなどで発信していたんですが、ファンの方からいただくお悩みなどにもっとダイレクトにすぐお返事したいなと思って、記事にお悩みのお返事を書いたり、ライブに来られない遠方の県の方にも楽しんでもらおうとライブのネット配信をしたりしました。ブログやTwitterなどを通じて、遠い存在ではなくていつでもそばにいてくれる親友のようなそんな存在になれたらいいなと思って。そう思った時に一番近くでファンの皆さんを感じられる方法が私にとってSNSだったのかなと思います。
  楽曲制作や宣伝についてはいくつかの方針を立てていますが、特に意識しているのは「分かりやすくて飾らない歌詞で表現する」ということです。ericaの楽曲は「半径2メートル以内の恋愛を歌う」ことをモットーにしていて、ファンの方々(主に女子中高生・女子大生)からいただいた恋愛相談を元に作詞されています。「好きな人に面と向かって告白できない」、「担任の先生を好きになってしまって、かなわない恋だと理解しているけれど、それでも諦められない」といった、女子中高生目線の「等身大の恋の悩み」をダイレクトに歌詞にしていることが、広く共感を得るための重要なファクターであり、クチコミで広まる原動力になっていると思います。最近は、Twitterで流行っている「歌詞画」や、MixChannelで流行っている「歌詞動画」など、好きな楽曲の歌詞を絵や動画にして共有することが一つの文化になっていますので、「歌詞画」「歌詞動画」に使いやすいという意味でも、「等身大の歌詞」というのは非常に重要な要素だと思っています。あとは、それらの現象を広がりやすくするように、リリース前からYouTubeでフル尺のPVと歌詞を公開したり、ファンの方が作ってくれた歌詞画をericaのTwitterやブログで紹介したりするなどの工夫をしています。


 
着うた(R)、着うたフル(R)、iTunes、他
今回の新曲も、まさにファンの方からいただいたお悩みを元に作った曲で、曲名の通り「卒業までに伝えたいこと」をそのまま素直に歌った曲です。卒業は告白できる最後のチャンス。ここで想いを伝えなければ一生後悔するかもしれない。たわいもないメールも本当はすごく嬉しかったこと。ずっと憧れていたこと。隠していた気持ち。弱い自分。変わりたいと思ったあの時。諦めかけていた気持ち。「そんな片想いからの卒業」という意味も込めて作りました。恋をしている全ての方に聴いてもらえたら嬉しいし、「あなたへ贈る歌」に続くような沢山の方に愛される曲になれたら幸せです。(erica談)  

今やユーザーによる、音楽の“拡散力”は強烈なパワーを持っている。それはやはり、“好きなもの・楽しいもの・良いものを分かち合いたい”という現代の人々の“シェア心”がSNSという最新メディアと非常に相性よく作用し合い、大きな波を作り出してゆくからであろう。とはいえ、これは現代に限ったことではなく一昔前でも、好きな子に聴かせたい音楽をカセットテープに録音して手渡したりといった小さなカタチでこの“シェア心”は見受けられていたのではないだろうか。形や規模の大きさは違うとはいえ、自分の好きなものや想いを大切な人と共有したいという根本にある気持ちは今も昔も変わらない。

これからは、YouTubeをはじめとしたプロモーションの工夫が爆発的なヒットを生み出す鍵となり、音楽の未来はユーザーの“シェア心”から生まれる“拡散力”に託されているといっても過言ではない。また、ericaの例でもそうであるように、アーティスト自身もTwitterやFacebookの反響からブームに気がつくといったことも少なくない。生まれた時からインターネットや携帯に接してきたデジタルネイティブと呼ばれる世代(女子高生のスマホ利用時間は1日平均7時間以上)が、当然のごとくソーシャルメディアを活用している現状を理解し、活用してゆくことが成功のポイントであり、現代の新しい音楽のカタチかもしれない。


日本におけるスマートフォンからのLINEとFacebookの平均月間利用者数は、いずれも3.000万人以上。Twitterの利用者は2,800万人以上、YouTubeの利用者は2,700万人以上となっており、日本の人口の4人に1人が「スマートフォンでSNSを利用している」ということになる。YouTubeの動画がきっかけで世界的にブレイクしたきゃりーぱみゅぱみゅのTwitterフォロワー数は、292万人以上で、日本のアーティストでは第1位(2015年2月現在)。次いで、宇多田ヒカル、西川貴教、浜崎あゆみ、深瀬慧(SEKAI NO OWARI)らが人気アカウントとなっている。また、Facebookでは、安室奈美恵、EXILE、Perfume、西野カナらが、大きな影響力を持っているようだ。