神楽坂

毘沙門天の おみくじを
坂の途中で 引いたのは
待ち人はもう いないけど
恋の証しを 結ぶだけ

お世話になった 店に寄り
挨拶済ませ 坂道を
鞄ひとつで 下りてゆく
何年過ぎた 夏の雲

故郷(ふるさと)遠く 家を出て
見よう見まねに 働いた
泣いて 泣いて 泣き濡れて
この身を燃やした 神楽坂
泣いて 泣いて 泣き抜いた
不器用なりの 泣き方で

打ち水したて 石畳
路地の影から あの人が
いまでも逢える そんな気が
それがつらくて 街を出る

毘沙門天の おみくじに
恋の行方を 聞いてみた
誰か哀しむ 恋よりは
ひとりで泣くと 決めたのに

何か忘れて いるのでしょう
何をおきざり するのでしょう
泣いて 泣いて 泣き濡れて
静かに見ている 神楽坂
泣いて 泣いて 泣き抜いた
大人になったと 思えれば

泣いて 泣いて 泣き濡れて
この身燃やした 神楽坂
泣いて 泣いて 泣き抜いた
不器用なりの 泣き方で
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