パンプキン・パイとシナモン・ティー

二丁目の交差点から17軒目で
時々走って2分と15秒
平均112.3歩目に我等の
コーヒー・ベーカリー『安眠』がある

お人好しのマスター三十六 独身の理由は
引っ込み思案で 照れ屋でまぬけの 複雑な性格による
コーヒーは確かにうまい でも僕等男には
理解出来ないが娘等は ここのかぼちゃパイが 美味しいという

パンプキン・パイとシナモン・ティーに
バラの形の角砂糖ふたつ
シナモンの枝でガラスに三度
恋しい人の名を書けば
愛が叶えられると 娘等は信じてる

ミス・パンプキンのいつもの座席は
窓際のゴムの木の向う側
背は高からず 低からず 容姿端麗
彼女は僕等の憧れの的

実は不敵にもマスターがこのマドンナに恋をした
まぬけないじらしさ見たさに
授業を抜け出して来てるのに
ちっともらちがあかないマスターは
照れ屋でまぬけだから
たった一言かけた言葉が
事もあろうに「毎度ありがとう」

日頃のお世話に感謝をこめて
僕等はまたまた授業抜け出して
シナモンの枝でガラスにラブ・レター
ミス・パンプキンに差し出した
ところが急に店を飛び出した彼女の
背中とマスターの半ベソ交互に見くらべ
僕等は立場失くして
ひたすらうろたえた

それからしばらくしてマスターは
お陰さまで嫁さんをもらった
相手がミス・パンプキンかどうかは
ああいう性格だから白状しなかった

ただそれから僕等の待遇が
良くなった事と
僕等の追試が決まった事の
他には変わりは無い
2代目ミス・パンプキンはなかなか現われないけれど
此頃すこうし僕等にもかぼちゃパイの
味が解ってきたところ

パンプキン・パイとシナモン・ティーに
バラの形の角砂糖ふたつ
シナモンの枝でガラスに三度
恋しい人の名を書けば

パンプキン・パイとシナモン・ティーに
バラの形の角砂糖ふたつ
シナモンの枝でガラスに三度
恋しい人の名を書けば
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