序曲

雫 ひとつ ひとつ ひとつ 滴るように
知らず知らず 募り 募っていく
私の奥の奥の奥の 小さな火が灯るのを見ている

色を 重ね 重ね 重ね 塗り足しても
どこか虚像じみて見える自画像
箱を開けて 開けて 開けてもその中に
何もないとしたら

重力に逆らって浮かび上がる鉄の舟はどこへ行くのか

ああ なぜ暗闇もなく光を知り得るだろう
あれは最後の灯火
いいえ ようやく届き始めた来光

人はひとり ひとり ひとり違っていても
最後に行く場所は同じでしょう
何を抱いて 抱いて 抱いて生きても
それは置いていく約束

終着地へ向かって
乗り合わせた人の群れは身を寄せ合うの

ああ なぜ過ちもなく自分を知り得るだろう
これは償いの記録
いいえ、あなたにしたためている手紙

今、今が生まれて
今、今が終わる
今 今 今を積み上げる 今

ああ なぜとりとめもなく涙が落ちるのだろう
これが望んだ結末
いいえ これこそ静かな前ぶれ
私が待ちわびていた 始まり
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