残ってる

改札はよそよそしい顔で
朝帰りを責められた気がした
私はゆうべの服のままで
浮かれたワンピースがまぶしい

風邪をひきそうな空
一夜にして 街は季節を越えたらしい

まだ あなたが残ってる からだの奥に残ってる
ここもここもどこかしこも あなただらけ
でも 忙しい朝が 連れて行っちゃうの
いかないで いかないで いかないで いかないで
私まだ 昨日を生きていたい

駐輪場で鍵を探すとき
かき氷いろのネイルが剥げていた
造花の向日葵は私みたい
もう夏は寒々しい

誰かが煙草を消したけれど
私の火は のろしをあげて燃えつづく

まだ 耳に残ってる ざらざらした声
ずっとずっとちかくで 聞いてみたかったんだ
ああ 首筋につけた キスがじんわり
いかないで いかないで いかないで いかないで
秋風が街に 馴染んでゆくなかで
私まだ 昨日を生きていた
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