ナツノニオイ

今は辛くないよ 胸も痛くはない
こんなふうに笑えるようになっているから
ナツノニオイがする そしてさよなら

風に舞う 長い髪 あなたの薬指には
いつだって指輪が光って
それを見ないふりをしてた
困らせるの 嫌だから 何も聞かずにいたけど
あなたは僕を愛してたの?
それとも愛は なかったの?

手首掴んだまま 僕が走り出すと
戸惑う顔しながらあなたはついてきたよね
ナツノニオイがした 抱きしめたとき

背の高い 僕のこと 目を細め見上げながら
一言も話さないあなたの
薄い唇 好きだった
アスファルト 照り返す 陽炎(かげろう)に迷ったような
やるせない恋が始まって
ひと夏だけで 終わった

「もう若くはない」が あなたの口癖で
そんなことを言われるたび 自分の若さを捨てたくなった

風に舞う 長い髪 あなたの薬指には
いつだって指輪が光って
それを見ないふりをしてた
困らせるの 嫌だから 何も聞かずにいたけど
あなたは僕を愛してたの?
それとも愛は なかったの?
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