すかんぽの唄

ちぎるとスポンと音がして
青い匂いが手に残る
すかんぽ摘めばおもいで帰る
胸の痛みに気がついた
あれは俺らのあれは俺らの十九の春さ

利根川提に腰かけて
水に小石を投げたころ
すかんぽ摘めば浮かんでくるよ
幼なじみの由美ちゃんが
嫁にゆく日の嫁にゆく日の花嫁姿

由美ちゃんおぼえているかい
いつも二人きりで待ち合わせてさ
春の小川を歌ったあの河原道のこと
いつか由美ちゃんが急に
「あたしおしっこしたくなっちゃった」
って言ってさ「清ちゃんあそこでみはってて」
なんて俺言われて
俺どっちむいていいかわかんなくてさ
いっしょうけんめい目をそむけてさ……
すかんぽの芽ばっかりちぎっていたっけ
見上げた空には白いちぎれ雲がぽっかり
浮かんでてまだまだ水のきれいな
故郷だったんだよね

ちぎるとスポンと音がする
それが俺らの恋だった
すかんぽ摘めば瞼がぬれる
もっといい娘がいるんだと
いつも自分をいつも自分を慰めたっけ
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