金の月

畳に徳利(とくり)が転って
お風呂にお湯が あふれ出し
それでも この手を ほどかずに
惚れたあんたの 肩をかむ
外は九月の 金の月
貼り絵みたいな 金の月
あんた死ぬまで 一緒がいいと
こおろぎみたいに おんなは泣いた

ことんと月夜の 鹿(しし)おどし
背中に寒さ舞い降りて
あんたは わたしを 頭から
胸に抱きこみ また 燃やす
外は居待(いま)ちの 金の月
満つれば欠ける 金の月
あんた奪って 死ぬのもいいと
夢二の絵を見て おんなは泣いた

外は九月の 金の月
貼り絵みたいな 金の月
だめよ 駄目 駄目 あんたでなけりゃ
こおろぎみたいに おんなは泣いた
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