かつては男と女

さざめく青さの盛り、立ち止まる術が無くて巡る季節
を先取りしていた。瞬く若さも終わり。「この侭昔のよ
うに‥」暮れ行く空を眺めて居たいと思って見上げる。
ひと気のない湿った目抜き通り。夕涼に視線を逃がし
ながら「お互い老けたね。」と、言う貴方の表情(かお)は子供
のようで、あどけなく八重歯を残す。見慣れた笑顔その
口元へ、一度触れれば二人再び始まりそうで、堅く利き
手を握り締めている。一言漏らせば終わり。「この侭昔
のように‥」暮れ行く街に紛れて居たいと思って飲み
込む。
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