里ごよみ

母の涙に とまどいながら
花の都へ 旅立つ日
好きな道なら やるだけやれと
親父の言葉に すくわれた
数え十九の 里ごよみ

俺に思いを のこしたままで
あの娘嫁いだ 風だより
下り列車の 汽笛にゆれて
駅うら酒場の 冷酒が
こぼれにじんだ 里ごよみ

山も目ざめて 根雪もとけて
やっと故郷も 遅い春
夢に手ごたえ あっても今は
帰るに帰れぬ 身の上を
つづる男の 里ごよみ
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