LIVE REPORT

NANO-MUGEN FES.2008 ライブレポート

NANO-MUGEN FES.2008

NANO-MUGEN FES.2008 渋谷CHELSEA HOTEL

2009年08月06日@ 渋谷CHELSEA HOTEL

撮影:TEPPEI、中河原理英/取材:榑林史章

2008.07.20

7月19日と20日の2日間、横浜アリーナにて『NANO-MUGEN FES.2009』(以下、ナノムゲン)が開催された。国内のバンドだけでなく、海外からも多くのアーティストを招聘するこのイベント。今回の目玉のひとつだったマニック・ストリート・プリーチャーズの出演がキャンセルになってしまったのは非常に残念だが、海外からは計5組が出演した。心揺さぶるメロディーとサウンドで観客を扇動したnada surf。パンクやレゲエなど多彩な音楽性で観客を沸かせたHARD-FI。スタンディングでピアノを弾く様子が印象的で、シンプルなサウンドに乗せてポップなメロディーを聴かせたBen Folds。アジカンの「アンダースタンド」をクラブアレンジで披露するなど、派手でちょっとおバカなパフォーマンスが好評だったTHE YOUNG PUNX!。FARRAHのJez & Michelleはアコギとベースのアコースティック仕様で、温かくほわっとしたステージを披露。みんな満面の笑みで、日本のオーディエンスとともにイベント出演を楽しんでいたようだ。 国内は、アジカンを含む計8組が出演。和とオルタナティブをミックスしたような独自の感性で人気を博すOGRE YOU ASSHOLEは、独特なビートとギターで観客を釘付けに。たったひとりでステージに上がり、弾き語りによる情感たっぷりの歌声で良質なメロディーをしっとりと聴かせた清 竜人。豪快なバンドスタイルとクラブテイストを融合した独自の音楽性を持つサカナクションは、壮大なハーモニーも聴かせて観客を圧倒した。 注目は1日目に出演したthe HIATUSだ。ELLEGARDENの細美武士(Vo)の新ユニットで、元ミッシェルガン・エレファントのベーシストのウエノコウジ他、名うてのミュージシャンが集結したことでも話題である。すし詰め状態のフロアと鳴り止まない大歓声が注目度の高さを物語っていた。美しいピアノとソリッドなビート、そして広がりのあるサビが印象的な「Ghost In The Rain」をはじめ、どこまでも広がっていくようなスケール感を持った「The Flare」など、アルバム『Trash We'd Love』から9曲を披露。メランコリックなメロディーと透明感のあるピュアさ。the HIATUS独特の世界観が会場を異質な次元へと導いてくれた。 1日目のトリは同イベントの常連、ストレイテナー。昨年の出演時に“来年はトリをやってほしい”と言われたそうで“本当にやらされた”と、うれし恥ずかしの様子のホリエアツシ(Vo&Gu&Piano)。最新作『Nexus』からの楽曲を中心に、繊細さとダイナミックさを持った新曲「CLONE」も演奏。アンコールではアジカンのメンバーを呼び込み、ど派手なバージョンの「KILLER TUNE」を演奏。両バンドの絆の強さを感じさせるラストだった。 2日目の目玉として登場したのは、8月22日に開催される『ロックロックこんにちは!in 仙台』でもアジカンとの対バンが決定しているユニコーンとスピッツ。1日目とは違い年齢層高めの客席に向かって“『クイズ年の差なんて』で言うと、今日はアダルトチームですね”と冗談交じりで笑ったアジカン後藤。大御所の出演が『ナノムゲン』に新たな風を吹き込んでくれた。 まずユニコーン。アルバム『シャンブル』からの楽曲に加え「すばらしい日々」や「ヒゲとボイン」などの名曲を連発して観客は大盛り上がり。奥田民生(Vo)の“ヨコハマー!”という問いかけに“ウォー!”と大歓声で応える観客。“こういう大きいとこ慣れてないもんで。頑張ります”と笑う民生。ベースEBIのヴォーカル曲もあれば、キーボードの阿部義晴がギターヴォーカルをとる「WAO!」も披露したりと、短い時間ながら実に豪華な内容。最後には『シャンブル』のラストに収録の「HELLO」を披露。キャリアに裏打ちされたスケールの大きさと迫力は大感動だった。 スピッツは“ついに『ナノムゲン』に呼んでもらえました”と草野マサムネ(Vo&Gu)。アルバム『さざなみCD』からの楽曲を中心に、「チェリー」や「スパイダー」といったお馴染みのナンバーを加え全8曲を披露。メロディアスでネオアコ風なサウンドでは観客はゆったりと肩を揺らして一緒に歌い、アッパーなロックナンバーではジャンプしまくる。草野がハンドマイクで走り回る姿もあり、ライヴならではの実にロックでアグレッシヴなスピッツを見せてくれた。 最後にアジカン。1日目はトリをストレイテナーに譲ったが、2日間のイベントの大トリを務めた。両日ともオープニングを飾ったのは『ナノムゲンコンピ』に収録の新曲「夜のコール」。軽快なビートとシンプルなギターが、アジカンの世界へと引き込む。1日目は『君繋ファイブエム』と『ワールド ワールド ワールド』からの楽曲が中心で、2日目は『崩壊アンプリファー』も含め全てのアルバムから楽曲を披露。サイトでのファン投票による“ライヴでやってほしい曲”の1位に輝いた「絵画教室」も演奏した。MCでは“年々良いフェスになってきた。こういうフェスにしたかった。ジャンルとか邦楽洋楽の垣根を越えて、音楽として楽しめるようになればいい”と後藤。ラストにはそんな願いを込めて「新しい世界」が演奏された。 ただバンドをたくさん集めれば良いというわけではなく、本当に好きなバンドに声をかけ、“こんなにすごいバンドがいるんだよ、みんなにも見てほしいんだ!”という、アジカン4人の強い想いが伝わったフェス。そして、その気持ちに集まった観客は精いっぱい声を出して応えた。他とは違うロックフェスのひとつのあり方が結実した2日間だった。