90%くらいの確率で僕らの曲にはそのワードが入っています。

―― 10曲目の「分かれ道」は、失恋ソングと捉えていましたが、今日お話を聞いていると、それだけではなさそうですね。

☆イニ☆ そうですね。もちろん失恋ソングとして聴いていただいて良いんですけど、もともとは同じYouTuber仲間や好きなアーティストさんがもし活動を辞めちゃったら、めっちゃ寂しいなという気持ちから生まれた曲なんです。やっぱりみんながみんなが好きなことで食っていけるわけではないので。だからこそ最後のサビの<好きが嫌いになるなら、もう止める必要はないけど 好きなのに君は 遠くへ行くの?>というフレーズには、自分の本音が入っています。

―― それを踏まえて聴くと、また別の切なさがありますね。個人的には<正直悔しいよ>というフレーズがリアルだなと感じました。悲しいより、寂しいより、悔しいんだなと。

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☆イニ☆ うん。自分にできることはなかったんだろうかと思ったりしちゃいますね。

テオ やっぱり実際に「辞めたい」という相談を受けたとき、自分にはどうにもできないなという気持ちが一番で。本人が「辞めたい」と思っているなら、止めることもできないし、その想いを変えることが正しいとも限らないし。そのどうしようもない感情が<悔しい>という言葉になった気がします。

でも、それなら自分に何ができるんだろうって考えたんです。その子を一緒に伸ばしていくのか、辞めても生きていけるような道を作ってあげるのか。とにかく、選択が間違いじゃなかったということを示してあげられたらいいなという気持ちで、<僕にできるのは君の選択に後悔を残させないことだけ>というフレーズが出てきましたね。

―― どこかこの「分かれ道」と同じ気持ちが通じている「リメンバー」は、どのように生まれた楽曲なのでしょうか。

☆イニ☆ これを作ったのは、去年の春夏くらいだったかな。自分たちはずっとZeppでライブをしたいと夢見て、そこを目指して活動してきたんですね。そして、ツアーでやっとその夢の場所に立つことができたんです。僕はずっと客席からアーティストを観て、かっこいいなぁと思っていた側だったんだけど、ついにステージ側からみんなを見ることができるようになったんだなぁっていう、あの初めての景色を忘れないために書いたんです。

☆イニ☆ あと僕らはデビュー曲で「スタートダッシュ」という曲を出したんですけど、その続きのような感じもあります。だから最後の歌詞に<一歩踏み出す勇気だって 僕等にはないのに 理想描いては掻き消して妄想抱いてる そんな幻想を 現実に変えたのは君のおかげだから>という「スタートダッシュ」と同じフレーズをそのまま入れたり。そこには、スタートダッシュしたけど、いろんな景色を忘れないように、突き進んでいるぞという気持ちを込めましたね。

―― では、お二人がこのアルバム収録曲の中で、もっとも「書けて良かった」と思うフレーズをそれぞれ教えてください。

☆イニ☆ 僕はやっぱり「リメンバー」のサビですね。<いつかあの場所に立って思いっきり歌おう 眺めた景色は一生忘れないだろう>というところ。この<あの場所>っていうのは、今後も変わっていくと思います。この曲を書いたときはZeppだったし、今ならホールだし、これからもっとデカいところを目指していくし。でも、もし何を叶えたとしても<あの場所>の景色は絶対に忘れない。どんどん更新されていくフレーズだと思います。

テオ 自分は「おバカだっていいじゃないか!」の<答えなんていくつあったって いいじゃないか♪>ですね。これはもう小学生くらいのときから思っていたことなんです。答えって、誰かが示すものじゃなくて、自分が示したもので。友達の答えも、誰かの答えも、間違ってないし。いくつあったっていいんじゃないかと。そういう気持ちを<♪>をつけたバカみたいな歌詞で書けたところが気に入っていますね。

―― 今作では“韻”が踏まれている楽曲も心地よかったのですが、お二人は韻を踏む歌詞ってどのように作られているのでしょうか。

☆イニ☆ 僕の場合は、言いたい気持ちを先に考えて、それに合う言葉を考えていく感じですね。いくつかワードを書いていって、当てはめていく。でもね、ラッパーは韻に縛られていると僕は思うんですよ(笑)。やっぱりなんとかして曲の中でうまく韻を踏みたいというシガラミのなかで頑張って生きています。だから韻によって、歌詞の意味が狭くなっちゃっていることも結構あるかもしれないなぁ。

テオ そういえば僕と☆イニ☆君では、まったく韻の踏み方が違う気がする。自分の場合、たとえば<じれったい>って言葉の他の言い回しはないかなって、意味合いの似ているワードを思い浮かべて、韻を踏めるものを選んだりはするけれど…。でも僕はあまり韻を意識したことがないから、☆イニ☆君ほどは縛られてないかも!

☆イニ☆ それが一番良い状態なんですよ(笑)!

―― 歌詞を書くときに大切にしているのはどんなことですか?

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テオ そのときに思ったことを、そのまま書く!

☆イニ☆ 自分も一緒です。同じテーマを扱っていても、書く時期によって、全然伝えたいことが違ったりするんですよね。多分「リメンバー」を今書いたら、ちょっと違う内容になると思うし。あのとき思ったことを、そのまま書いたからこその歌詞なんですよ。その日、その時が反映されているから、作詞は結構、タイミングが大事かもしれないです。

―― 作詞をするとき、よく使うワードってありますか?

テオ <僕>と<君>だね。二人でよく即興ソングとかも動画撮影するんですけど、やっぱり90%くらいの確率で僕らの曲にはそのワードが入っています。自分たちは今、誰かに伝えたいという想いが一番大きいので<僕>と<君>が欠かせなくなってきちゃうのかな。やっぱり歌詞には嘘をつけませんね。

―― 逆にあまり使わないワードはありますか?

テオ あ~<死ね>って言葉とかはあんまり…。アルバムに「Ride or Die」って曲はありますけど、これはまた意味合いが違って“一か八か”みたいな感じなんです。よくメッセージ性の強い曲で“死ね!死ね!死ね!”みたいな歌詞、あるじゃないですか。別にそれを聴くのはまったく嫌じゃないんですけど、自分にはその歌詞は書けないなって思います。

―― お二人が歌詞面で影響を受けたアーティストというと?

テオ 僕はRADWIMPSです。昔から、よくカラオケとか行っていて歌うことは好きだったんですけど、ちゃんと歌詞を見たことがなかったんですよ。空耳で、メロディーと雰囲気だけで歌っていたというか。でも中学のときに、RADWIMPSに出会って、初めて歌詞を読みながら聴いたのが「有心論」で。これはすごいなと。あれ、最強じゃないですか!そこから受けた影響は大きいなと思います。

☆イニ☆ 僕は「おバカだっていいじゃないか!」のような曲調の歌詞の影響は、FUNKY MONKEY BABYSさんからです。元気も勇気ももらえるので、好きでよく聴いていて。あと「リメンバー」のような“過去を振り返る系”の歌詞は、らっぷびとさんというネットラップの先輩から影響を受けています。自分の経歴を歌詞に落とし込むような感じが好きですね。

―― ありがとうございました!では最後に、お二人はこれからどんな歌詞に挑戦してみたいと思いますか?

☆イニ☆ 僕は常日頃“意味のわからない歌詞”を書きたいと思っています。解釈もできないくらいの。たとえばきゃりーぱみゅぱみゅさんの「PONPONPON」の<PONPONうぇいうぇいうぇい>とか大好きです!音を楽しむ系が好きなので、書いてみたいなと思いますね。

テオ 自分はMrs. GREEN APPLEさんの「WanteD! WanteD!」という曲に、日本語なのに英語に聴こえるフレーズがあるんですけど、そういう歌詞を書いてみたいですね。歌詞カードを読んで初めて「わ!日本語なんだ!」って面白さがあるというか。そういう歌詞に挑戦してみたいなと思います!


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